第45回創作ラジオドラマ大賞 公開講座 レポート(2016/11/19)

   去る1119日(土)、渋谷道玄坂フォーラム・エイトにて、「第45回創作ラジオドラマ大賞 公開講座」が行われました。

脚本家 原田裕文さん
脚本家 原田裕文さん

   最初に、脚本家の原田裕文さんによる「ラジオドラマ脚本を書きながら考えていること」と題した講演が行われました。原田さんは、「ラジオドラマは音だけの世界で脚本を書くのは難しいが、逆にそれが武器にもなる。聴く人の想像力をかき立てるような作品を書くことが重要です」とお話されました。また、コンクール応募は、「自分が書きたいものがあることが大前提」で、作者の情熱や思いが審査員に伝わる作品が求められると強調されました。それは作者のこれまでの経験から生まれるもので、テーマや素材は過去の受賞作やトレンドに縛られる必要はないとのことでした。そして締めくくりに原田さんは、「脚本の神様は皆さんをちゃんと見ている。自分は神様から選ばれた人間だと信じて、最後まで応募作を書き上げてください」と力強いメッセージをくださいました

脚本家 湯川立子さん
脚本家 湯川立子さん

   続いて行われたのは、前回の第44回の大賞受賞者である湯川立子さんの講演でした。湯川さんは、「ラジオドラマ大賞受賞それまでとそれから」と題して、受賞作執筆の経緯などをお話されました。受賞作『佐恵子の話』は、亡くなった友人のことを記録したいと思い執筆を決意したそうです。そして、執筆前には綿密な取材を行い、「愛」をテーマにすることを決めるなど具体像を構築。その上で脚本教室に通ったり、過去の名作を聴いたりして、ラジオドラマについて勉強しました。前回の公開講座にも参加されたそうです。その成果が実った受賞。おかげで湯川さんは、「多くの経験ができました。特に収録に立ち会うなど、制作過程をつぶさに見分できたのは貴重な経験でした」とお話されました。最後に、「皆さんにもぜひこうした体験をしてもらいたいので、頑張ってください」と受講者にエールを送りました。

NHK音声ドラマ部 真銅健嗣さん
NHK音声ドラマ部 真銅健嗣さん

   その後は、NHKドラマ部チーフディレクターの真銅健嗣さんの「ラジオドラマ演出家が出会いたい脚本/脚本家」とい題した講演が行われました。制作者としてコンクールに何を期待するのか。真銅さんは、「コンクールはゴールではなく登龍門。何年後かのプロのラジオドラマの脚本家と出会う場だと考えています」とお話しされました。その上で、「魅力ある人物を描くこと」「簡潔で意味が伝わる良い日本語で書くこと」「自己中心的にならないこと」などをアドバイスされました。また、「主要な人物は血の通った人物にすること」として、そのために取材をしてリアルな人物像を作るようにお話されました。さらに、「自分にしか書けないものを見つけて、それを作品にしてほしい」とも述べられました。そうした作品からは作者の生き様が見えてくるそうです。それ以外にも、執筆に関する細かなアドバイスもあり、盛りだくさんの内容の講演でした。

司会は脚本家の井出真理さん
司会は脚本家の井出真理さん

   この日、最後に行われたのは「まだ間に合う!私たちはこんな脚本を推したい!」と題した座談会です。原田さん、真銅さんに、脚本家の中沢香織さんが加わって、脚本家の井出真理さんの司会で、幅広いテーマについてのお話がありました。コンクール受賞歴のある原田さんと中沢さんは、それぞれの受賞作の執筆の経緯を披露。どちらも自身の体験をもとにしつつ、そこから様々なイメージを膨らませていったことがわかりました。真銅さんは、作家からネタをもらって、それを取材などを通して一緒に膨らませていった経験をお話されました。テーマについては、最初から決まっているケースよりも、まずネタがあって、それについて取材する過程で、自然に決まってくることが多いそうです。また、取材についてのお話もありました。原田さんは「インターネットも便利に使った上で生の声を拾うことが、リアリティにつながる」とアドバイス。真銅さんも自身の取材経験から、人の声を聞くことの大切さをアドバイスされました。

皆さん、熱心に聞き入っていました
皆さん、熱心に聞き入っていました

   時代劇やSF・ファンタジー作品を応募しようとする人も多いようで、それに関するアドバイスもありました。時代劇については「時代考証はしっかりする」「あくまでも現代人の目で描くものなので、それに対する謙虚さが大切」「今の視聴者に共感してもらうものが必要」といったお話がありました。一方、SF・ファンタジーについては「最初に決めたルールを逸脱して都合よすぎる展開にしない」「人物の行動が納得できるなどリアリティが必要」「SFやファンタジーにする必然性が求められる」といったお話がありました。その後は質疑応答があり、受講生たちの質問に対して出席者の皆さんがていねいに回答されました。最後には、出席者からの応募に向けたメッセージもありました。

日本放送作家協会理事長のさらだたまこ
日本放送作家協会理事長のさらだたまこ

   日本放送作家協会のさらだたまこ理事長による激励の言葉で、公開講座は終了しました。今回の講師の皆さんは、ラジオドラマの現場で活躍中だけに、実践的で具体的なお話が多かったように感じられました。受講生の中には、これまでに何度もコンクールに応募している人もいれば、初めてチャレンジする人もいます。誰にとっても応募に向けて悩みや迷いの多い時期だけに、皆さん、真剣に耳を傾けていました。細かなテクニックはもちろんですが、「あきらめずに最後まで書く」ことの大切さを実感できた講座だったのではないでしょうか。今回の経験をモチベーションにしてコンクールへの応募を果たすとともに、今後の様々な執筆に生かしたいと思います。