藤井青銅「ハズしてヒネってウラギッて~意表をつくアイデア着想法~」-第50回創作ラジオドラマ大賞 公開講座 レポート-

公開講座  第3回  ゲスト:藤井青銅さん(写真右) 

前回大賞受賞 足立聡さん(写真左)

NHKオーディオ班 木村明広さん

 

1.「ハズしてヒネってウラギッて ~意表をつくアイデア着想法~」 藤井さん

 

30代後半の頃、津川泉さんの紹介で審査員に。

以来、変則的なワケの分からない作品担当を自負している。

 

ラジオドラマを書き始めた頃~

月~金、男女1組。ショートドラマ。曲をテーマに何を描いてもいい、という枠。

選ばれるのは10人中5人。なるべく人の書かないものを描かないと採用されない。

 

自分は150キロの剛速球を投げられる本格派タイプではないので、

変化球やタイミングをずらしたりボークすれすれで、やってきた。

 

どのコンテストでも合議制だと、変化球タイプはなかなか残らない。

正統派ばかりだと息が詰まるので、そういう作品も必要。応援していきたい。

 

以降、青春アドベンチャー「ピーチ・ガイ」が出来るまで。

 

 

2.「創作ラジオドラマ大賞・大賞受賞作作品が放送されるまで」足立さん

 

「手を振る仕事」 

着想の原点

 10年以上前、満員電車で駅員さんが乗客を無理やり詰め込むシーンを客観的に見ていて殺伐とした雰囲気を感じた。そのとき、駅員さんが手を振ったら和むんじゃないかな、と思った。

 リアリティをどう持たせるか、なかなか難しくて、時間が経ったのだが、その後、ある方と3行ストーリー、あらすじの書き方を話していて、その方法にあてはめたら話が動いた。

 

ディレクターとのコミュニケーション

 木村Dが作品を尊重してくれて、ほとんど直しがなかった。

 

放送後の反響

 思った以上にあった。地元の新聞に載せてもらった。面白かったよ、と何人もから感想をもらった。

 

収録の感想

  木村さんのおかげで、書いている時とイメージが合っていたのが嬉しかった。

  木村さんと世界を共有できている感じがした。

 

その後の仕事

  受賞後、23本仕事をいただいた。お金をもらって書くのは大変だと感じた。

  企画書を書いているので、どんどん読んでもらおうと思っている。

 

 

3.「ドラマ化したい!と思わせる脚本とは」 木村さん 

 

 「手を振る仕事」を一押しに。何が決め手に?

   まず、タイトルの力。読んでみようかな、と思わせる。

   クスリとするようなやり取り。

社会から外れた人への優しいまなざし。

 

「どんな応募作に魅力を感じるか」

   面白いはそれぞれですが、 

 NHKはお行儀いい職員ディレクターといってもいい。

   フリーの立場からの提案に刺激を受けたい。

 

「キャスティングに希望を出すことは可能ですか?」

   実現するかは別として希望は出せます。

どんなイメージで描いたのか、聞くこともあります。

 

「音楽は情景描写に影響があると思いますが、脚本段階から書いた方がいいでしょうか?」

  実際、指定されることは少ない。

  浮かばないからダメということはないです。

 

  劇伴は作曲とはちょっと違うんですね。

製作の過程で演技や編集を経て出来るので、当初の台本のイメージ通りということはなかなかない。

 

「書きたいけど、ラジオドラマを聞いたことがありません」

  番組枠の紹介。

 

4.座談会形式でQ&A

 

「自分でこれはすごいと思っても、他人には響かないときがままある。客観的に見るには?」

 

足立:個人的には難しいと思う。自分もよくあります。できるだけ多くの人に見せて、意見をもらって、なるほどと思えば直す。そうかなと思うときは、自分と格闘する。自分が面白いと思ってることを貫く。その取捨選択が大事かと思います。

 

藤井:8割は通じないと思ってやってます()。「ピーチ・ガイ」も自分で勝手に書いて、なかなか本にならなかった。10人いて、面白いと言ってくれるのが2人。世間ってそういうもんです。時代もあります。10年後には受け入れられることもある。つまらないアイディアは自分でも忘れちゃいます。いい運に巡り合うまで、そのアイディアを持っていればいい。

 

木村:客観的になれるとは、そのアイディアにのってない、とも言えます()

     1日ゆっくり寝かせてみるのもいい。優しい友人、辛辣な友人に見せるのもいい。

 

木村:自分でなくても、他のディレクターが好きかも、と思わせる作品は残したくなる。

自分が違和感を覚えたときは、他のディレクターの意見を聞きたい、と思う。

 

「選ばれる作品に特徴は?」

 

木村:面白い、力強い、生き生きとしたキャラクター。たとえばLGBTQのような現代的なテーマを頭でっかちに考えず、生活と地続きで、最後までどんどん読めてしまう。

 

藤井:現代的なトピック、社会情勢を扱うにしても私は変化球、真正面からは取り扱うことはしないです()。でも世の中とリンクしていないと、いま書く意味がない。

     自分の中でこなして、作品にするのがいいと思います。

 

足立:特徴より、書きたいという熱量を感じる作品。

 

「ドラマ化しにくい作品やテーマはありますか?」

 

木村:「絶世の美女」ならOKだけど、「天才的な作曲家のメロディ」だと作らなくてはいけないので難しいですね。劇中劇の「面白い漫才」なんかも難しいでしょう。

 これ、書いてホントに音になるんだろうか、と意識してみてください。

 

藤井:つまんない音楽、つまんない漫才は書けるだろうけどね()

    ラジオドラマ、あまり聞いたことがないのが当たり前。

ラジオを舞台にしちゃうと、ラジオの専門家が審査するんだから相当ソンだと思います。

    

「タイトル、梗概で気をつけることは?」

 

足立:タイトルは作品の代表。タイトルだけで中身がないのも・・・。

    時系列通りに書くのではなく、人間関係を意識してあらすじを書いています。

 

藤井:「手を振る仕事」は、いいタイトルだなあと思いました。わたしはあらすじ読まないです。

    初見でシナリオを読んで、ああこうなるんだと感じていきたいんで。

    後で読みます。

    あらすじで、このドラマの面白さはここなんだよ、とつかめていると面白い。

    50分で描けることは少ないので、1点にしぼって書くといいと思います。

 

木村:あらすじをまとめるのではなく、ここがポイント、と思いを表現する場として考えるのもアリだと思います。

 

「映像化からスタートしてラジオドラマに書き換える場合、気をつけることは?」

 

木村:映像は情報量が多いので、そのシーンでいちばん描きたいことを抽出して、描いてみるといいかもしれません。

 

藤井:たとえば女が男をナイフで刺そうとしているシーン。「SE ナイフで刺す音」はない。「ナイフを持っている」ことを伝えないといけない。「このナイフで刺すわ」は説明セリフ。「ナイフを離せ」の方がまだいい。その時、教えられた。「人を殺す時はピストルにしなさい」。メディアに応じて、ふさわしい表現がある。

 

足立:(両方やっているけど)世界の広がりが無限で、ラジオドラマは書いていて、面白いですね。

 

「創作をする上でアイディアにつまったとき、着地点が見いだせないとき、どうやって状況を打破していますか?」

 

足立:必死で頑張るしかないんですけどね() 何日かおいてみるかなあ。

 

木村:いったんそこからハズれてみる。

脚本家の方には、いったん最後まで書ききってみては、と申し上げることもある。

    尺をオーバーしてもいいから書ききってみて、とか。

 

藤井:時間をおいたり、他のことを考えたり。

    「今まで書けたんだから、書けると思うしかないです」と星新一さんが仰っていた。

 

藤井:ラジオドラマはなかなか注目されないジャンル。頑張れば人に見つけられやすいと思いますので、頑張ってください!

 

足立:成長物語を書いて欲しい、と審査員に言われた。入口と出口は違わないといけない、と。

     今の時代の苦しさを跳ね返す主人公の姿を描いて欲しい、と言われたのを覚えている。

 

木村:自分が書きたいことを書けるのはコンクールか、メジャーになってからか。

 

     創作は孤独な作業でしょうが、いま自分が書きたいものをぶつけてきてください。