北阪昌人「セリフ術! ~良いセリフと残念なセリフ~」-第50回創作ラジオドラマ大賞 公開講座 レポート-

公開講座  第1回  ゲスト:北阪昌人さん(写真左) 小泉まきさん(写真真ん中) 野瀬育ニさん(写真右) 

 

「セリフ術! ~良いセリフと残念なセリフ~」

 

書いていると、独りよがりになりがち。実際に読んでもらって学んでください。

 

昨日、五反田を歩いていたんですが、僕は締め切りが迫って焦っていました。

スマホをカシャカシャという音が聞こえてきました。

立体歩道橋には大勢の人がいました。

その人たちはみな、空を見上げていました。そう、月蝕を見ていたんですね。

 

と、私はいま「感情」「音」「場所」「視線の流れ」を意識してお話しました。

 

主人公がいま、どんな気持ちかをまず言ってみると、。引き込まれやすい。

皆を引き込む「たくらみ」がセリフ術です。正しい文章がいいセリフというわけではありません。

ドキドキする、共感する。それがいいセリフの流れです。

 

1.  将来の幸せ 実演

野瀬「昔なら、男女逆かな。今風で新鮮だった」

   小泉「年齢・関係に迷いどころがあった。そこまで年上ではないのかな、と解釈した」

   北阪「なるべく目を閉じて、聞いてください。幸せとか未来とか抽象的。

   ラジオドラマは音声による映像表現。聞いただけで頭に映像化できないと伝わらない。

   当たり散らす、とか具体的に。どうやって映像化していくかで上手くなる」

 

2.  焼けぼっくい 実演

野瀬「やっていて台詞がのっていく感じ」

小泉「ちょっと余裕をもって楽しんで振り返られる感じ」

北阪「ラジオドラマは人物・場所・時間が早い段階で伝えられるといい。1分のあいだにそれがわからないと退屈に感じてくる。カタカナ表記・・・役者に対してヒントになる」

野瀬「色を出していいんだな、とわかる。感情のある読み方にした」

小泉「二人で楽しんでるのかな、というヒントになった」

 

3.  アクロイド殺し 実演

北阪「ウソがある。これがラジオドラマとしては大事。ウソからの切り替え。

いいセリフをよりよくするために役者は考えてくれる。

「・・・・・・」がいるか、「!」いるか、考えながら書くといい。

ダメ・・・を早くぶつけた方が面白くなる」

 

4.  コロナ 実演

北阪「感情が冒頭からノッているといい。怒ってることが伝われば聞いてくれる。

役割がハッキリして聞きやすい」

小泉「セリフを読んで気持ちよかった」

   北阪「語順を変えるだけでよくなる。綺麗に流れすぎているときは、引っかからないので」

 

5.  ウニと栗 実演

野瀬「楽しいですね。女性の頭の良さ。作者の頭の良さに感心した」

小泉「最初に髪の毛のことを言わず、おしゃれ」

北阪「構成が出来ている。いちばん大事なセリフ、「今日、髪、切ったんですけど」。テンの打ち方、上手い。どこで話しているか、という情報があれば、もっとよかった」

 

6.  カフェ 実演

北阪「前半、女性はモノローグ。モノローグは心の声と言われるが、聴いている方はモノローグもナレーションもセリフ。うまく逆手にとっている。

 

7.  京浜東北線 実演

北阪「映像化をわかって書いている。気持ちに沿って書いている。独りよがりだと、先に行きたくなってポンポン書いてしまいがち。リスナーはそこまでポンポンついていかない。柱は書かない。セリフで補う」

野瀬「雰囲気よく出ている」

小泉「話し言葉で言いやすい」

 

8.  自販機 実演

北阪「言葉の順番がいい。ときどき抽象的な言葉、哲学的な言葉を入れると、よくなる」

 

9.  男か女か 実演

北阪「テンポがいい。が、綺麗に流れすぎる。もっと作為的でいい。セリフはたくらみがあった方がいい。どのセリフを印象付けたいか、そこに向かっていく」

 

10.革靴 実演

   野瀬「主人と靴と、2つの恋が実る感じ。幸せになる感じ」

   北阪「うまく書けてる。せっかく人間じゃないものを出すなら、革靴の視線を出す。見上げる、とか」

 

11・金属バット 実演

   北阪「役者で解釈が分かれる作品でした」

   野瀬「ストーカーに追い詰められてると思った」

   小泉「二人は幼馴染だと思った」

   北阪「台本の・・・・・・が、意味を持たせてしまった。どういう意味で・・・・・・を打つのか、考えて書く。恩着せがましい、という言葉が強い。言葉の選び方だいじ」

 

12.救命士 実演

   北阪「感情から入っていて、いい。言葉を倒置した方が、フォーカスされる」

 

13.河童 実演

   北阪「いいですね。男女のセリフが同じ分量だと退屈になる。差をつける。女性が畳みかけるところが面白い」

 

14.携帯 実演

   北阪「うまいですね。お母さんへの気持ちを携帯一つで表現していて。いいセリフを二度言っても、いい。ラジオドラマの場合、リスナーに定着させるのにいい。1回目と2回目で言い方が変わる、それを役者さんは演じてくれる」

 

北阪「ラジオドラマは画がない。頭の中で、どう映像を紡ぐか。リスナーに紡がせるか。

人物・場所・時間を早い段階で見せていく。

情報じゃなく、情感に人は引っ張られる。なんで怒ってるの?なんで泣いてるの?」

北阪「セリフは噓をつく。モノローグは本音を言う」

 

野瀬「たった1枚の中に物語を描ける。才能を感じる。ラジオドラマ大好きなので、もっともっと書いてください」

小泉「短い中でドラマを書いていて、すごい。シチュエーションがわかっていると、感情がノって演じやすい」

野瀬「人物像が固まっていて、なだらかに感情がつながっていて、その感情に理由があると演じやすいですね」

小泉「感情の入るスイッチがあると、感情に任せて、ノッて演じられます」

 

北阪「雑誌DIMEでは、音声メディアの特集してます。ポッドキャストも隆盛です。音声メディアは人材を求めています。ぜひ応募を。お待ちしております」