第42回ラジオドラマ大賞 公開講座レポート 2013年11月23日

  去る1123日(土)、渋谷東急プラザにて、「第42回創作ラジオドラマ大賞公開講座」が行われました。

脚本家・北阪昌人さん
脚本家・北阪昌人さん

  最初に行われたのは、「実践!ラジオドラマ脚本コンクールに入選する方法」と題した北阪昌人さんの講義です。北阪さんは、ラジオドラマ大賞の入選をきっかけに本格的に脚本家デビューし、現在もラジオドラマを中心に活躍中です。

  今回の講義の目玉は、受講者が書いた脚本を徳本英一郎さんと小関里恵さんという2人の俳優が、その場で読んでくれるというもの。講義の冒頭で北阪さんは、『エレベーターに乗ったら故障して止まり、そして動く』というお題を出しました。それから約15分、受講者は真剣な表情で机に向かいました。

  その後、受講者が書き上げた脚本を俳優が読みこむ間、北阪さんはラジオドラマを書く時の注意点をいくつか挙げられました。「SEに頼り過ぎずにセリフで"場所"を明確にすること」「人物を絞り込むこと」「同じようなセリフを繰り返すのではなく、展開させること」など、どれも現役の脚本家らしい実践的なポイントばかりでした。

                徳本英一郎さんと小関理恵さん
徳本英一郎さんと小関理恵さん

  そして、いよいよ俳優が受講者の脚本を読みます。皆さんのレベルは高く、内容もバラエティーに富んでいました。北阪さんは、それぞれの脚本の感想や「こうすればもっとよくなる」といったアドバイスをしてくださいました。こうやって役者さんに読んでもらうことで、自分の書いた脚本が生き生きと息づき、執筆時とは違った角度から見つめ直すことができます。また、北阪さんは、読まれなかった脚本にも目を通して、熱心に感想やアドバイスを書いてくださいました。受講者全員にとってとてもありがたく、貴重な体験になったと思います。

佐々木正之さん 西尾成さん 藤井香織さん
佐々木正之さん 西尾成さん 藤井香織さん

  続いて行われたのは、「選ばれる脚本、聴きたい作品」と題したシンポジウムです。パネラーは、NHKドラマ部チーフディレクターの佐々木正之さん、創作テレビドラマ大賞の受賞者でラジオドラマも書いている藤井香織さん、前回の創作ラジオドラマ大賞の受賞者の西尾成さん。司会は脚本家の井出真理さんです。

  佐々木さんは、現在NHK で放送中のラジオドラマを紹介するとともに、前回の創作ラジオドラマ大賞の審査に参加した感想や、実際に入選作を制作した際のエピソードなどを語ってくださいました。藤井さんと西尾さんは、自作のラジオドラマが制作された時の様子や、本読みなどの制作の場に参加した感想を紹介されました。また、北阪さんも、自身がコンクールに入選した際のエピソードなどを語ってくださいました。

 

  受講者の多くは、今までに脚本を書いた経験はあっても、実際にそれがどうドラマ化されるのか、制作の現場についてはよくわかりません。そんな中、今回のシンポジウムでは、ディレクターと作家がどんなやり取りをするのかなど、制作のリアルな現場について知ることができました。また、「驚きや発見がある脚本に期待します」という佐々木さんの発言のように、現場でどんな脚本が求められているのかについても理解が深まりました。

  創作ラジオドラマ大賞の特色は、大賞受賞作が必ず放送されること。前回は特別に入選作が4本も放送されました。それだけに、ドラマ化の過程を知ることができたことは、受講者にとってコンクールの応募への意欲を強くかき立てたと思います。

  最後には、受講者からの質問にパネラーの皆さんが答える質疑応答も行われました。「時事的なテーマをどう扱うか?」「『人間を描く』とはどういうことか?」など、様々な話題が話されました。

さらだたまこ(日本放送作家協会理事長)
さらだたまこ(日本放送作家協会理事長)

  日本放送作家協会のさらだたまこ理事長が、皆さんに温かな激励のメッセージを送ってくださり、公開講座は終了しました。今回の講座で、脚本を書くテクニックを学ぶだけでなく、俳優が脚本を読んでくれたり、制作現場の様子を知ることができたことは、大きな収穫でした。コンクールの応募はもちろん、今後の様々な執筆の場で、今回の経験が生きてくるのではないかと感じました。

(セミナー受講生 T)